「褒めて伸ばす」という教育方法をよく耳にします。
「すごい!よくできたね!」のような言葉をかけて、子供や学生にやる気を出してもらう。
私も褒めてもらえばとても嬉しいし「頑張ろう」という気持ちが芽生えます。
それはよく解っています。
ですが、私は最後の最後まで生徒を褒めないようにしています。
それにはちょっとした理由があります。
子供はよく怪我をしますが、その分治りも早いです。
それはどうしてか解りますか?
私はこう思います。
「何度もけがをした分、その痛みを知る事が出来る。人は痛みを知った分、他人の苦しみを理解する事が出来る」と。
だから、治る怪我なら沢山した方がいい。
怪我をしたら治療しないといけません。その治療が「褒める事」ではありません。
私は、出来たことを褒める事が出来ますが、出来ていない事を指摘する事も出来ます。
出来たことは一瞬で終わってしまいますが、出来ていない事は繰り返されます。
出来ていない事が出来るようになる、それが当事者にとって一番嬉しい事ですよね。
「よく出来たね!」って当事者にとってはものすごく心に響く言葉だと思うのです。
だからこそ、安っぽい褒め言葉は言わないようにしています。
人生が大きく変わる瞬間、私の褒め言葉が一生の思い出になる様に。
そんな想いを込めて、合格報告をいただいた時は心から「おめでとう!本当頑張ったね!」と伝えています。
医師が「命を守る職業」なのであれば、教育者は「人生を守る職業」です。
ここでいう「教育者」は「教師」や「講師」とは異なります。
教師は教育委員会の言いなりの職業であり意志が反映されません。そんな職業が学生の未来を切り拓くのは難しい。
講師は各教科の指導に従事するのみで、学生の人生を考える事は行いません。
私は「出来る事を伸ばす」ように生徒に促し、私達は「生徒の出来ない事を指摘する」ようにします。
生徒は出来る事を頑張る事で個性を伸ばす事が出来る。
私達が出来ない事を指摘し、それを出来るように動く事で出来る事が1つ増える。
それによって「人生の選択肢」が1つ以上増えるのです。
そのような活動をしている職業を「教育者」だと考えております。
私は1人の「教育者」です。
生徒の選択した道程が限りなく生徒を幸せにする選択であるように。
その選択を沢山の選択肢の中から選択できるようにしてあげる事が最大の目標です。
褒める事は建前上は沢山の褒めがあれば沢山のチャンスが増えると考えてしまいますが、子供達はその中から1つに絞ってしまいます。
つまり、選択肢を1つにしてしまい可能性が生まれません。
だから、私は褒めないようにしています。
私のこの選択が沢山の生徒達の気づかなかった可能性を生んできました。
個性は十人十色なら、人生も十人十色です。
その1人1人の人生を守る事が私の褒めない理由にあると自負しております。